おばあちゃんと夏みかんの木は
隣に一人で住んでいらしたおばあちゃんが突然、引っ越された。
気のいい、男前なおばあちゃん。
前々から、測量屋さんが来ていたりして、うちの境界との立ち会いに旦那が行ったり
していたのだけど、その時さりげなく聞いても、引っ越すとは言ってくれなかった。
(将来の財産分与のために測量するとかもあるらしいし)
でも、薄々引っ越しかなとも思っていた。
おばあちゃんには、東北に具合のあまりよくない旦那様がいるらしい。
でもこの地を離れたくないのだと。
以前、ポストに蛇腹折りされた手紙が入っていた。
筆ペンで縦に書かれたそれは、達筆すぎて解読が難しく、誰かからの果たし状かと
震えたが、それはそのおばあちゃんからで。
我が家の窓から見える、おばあちゃんの庭の夏みかんを食べないかとの誘いだった。
(誰かからの果たし状じゃなくてよかった・ ・ ・ )
この地に引っ越して8年、ずっとおばあちゃんのお隣さんをやらせてもらってた。
窓から見える夏みかんのある風景も、私たち夫婦とずっと一緒に過ごしてきた。
先週、ちょうど採卵の日の朝、挨拶に来てくれたようだったけど、当然家を出た後で。
その後、すぐ東北に行ってしまったのか、我が家を訪れることはなかった。
昨日から、解体工事が始まった。
広い広い庭で野菜を育てるおばあちゃんと、夏みかんの木がある風景は、もう二度と
見られないんだね。
さみしいな。
引っ越してきた当初、赤ちゃんができたら見せてね!と言ってくれてたおばあちゃん。
それもついに叶わなかった。
解体した後は、3軒の新しい家が建つらしい。
(おばあちゃんちの庭でかすぎ)
当然のように、赤ちゃんやちいさい子供たちのいる家族がやってくるのだろうな・ ・ ・ 。
不妊だとわかり、流産しまくってからは特に、新興住宅地じゃなく、昔からの
土地に家を買って良かった♬と思っていた。
でも年月が経てば、世代交代で周りの住人も住環境もあっさり変わってしまう。
これからどんなふうに変わるのかな・ ・ ・ 。
子ナシ確定したら、すぐにでも二人暮らし向けのマンションに引っ越したい。
持ち家を失う恐怖はあるけれど、自分の家だけ子なしの環境で暮らすのは、不妊様の
精神状態がもちそうもない。
おばあちゃんと夏みかんの木と、そう遠くない時期に私も。